2021年サッカー日本代表の日程と放送|DAZN独占と地上波撤退の真相
日本サッカー界におけるメディア接触の歴史を振り返る際、2021年秋は誰もが認める最大の地殻変動が起きた転換点でした。森保一監督率いるサッカー日本代表(森保ジャパン)が、カタールW杯出場を懸けて挑んだ「アジア最終予選」。初戦のオマーン戦でまさかの黒星を喫し、崖っぷちに立たされたチームの激闘以上に世間を震撼させたのが、「アウェー戦の地上波テレビ中継の完全消滅」と「DAZNによる全試合独占有料配信」という冷徹な現実でした。
かつて列島全体を熱狂の渦に巻き込み、視聴率30%超を叩き出すのが当たり前だった国民的コンテンツは、なぜ突然お茶の間から姿を消したのか。スポーツビジネスが激動の過渡期にあった2021年の全対戦日程と放送実績を再検証しつつ、放映権料高騰のカラクリや無料視聴の裏ワザを巡る狂騒曲、そして有料配信が定着した現代へと続くメディア構造の変化をプロの視点から紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2021年のカタールW杯アジア最終予選において、日本代表のアウェー戦全5試合は地上波テレビ中継がなく「DAZNの完全独占生配信」となった。
- 要点2:地上波撤退の主因はアジアサッカー連盟(AFC)の代理店による放映権料の天文学的な高騰であり、テレビ局の広告採算ラインを完全に超えたことにある。
- 要点3:当時の無料トライアルによる視聴手段の変遷と、スポーツが「無料のお茶の間文化」から「有料サブスクリプション」へ不可逆の移行を遂げたメディア構造の真実を総括。
【2021年全試合カレンダー】激闘の森保ジャパン全対戦カードと放送実績一覧
2021年は、世界的なコロナ禍による延期や制限が色濃く残る中、森保ジャパンにとって2次予選の消化、東京オリンピック男子サッカー(U-24世代)のサポート、そしてカタールW杯アジア最終予選の開幕と、極限のスケジュールが重なった一年でした。サポーターが最も混乱したのは、「どの試合が地上波で見られて、どの試合がネット配信限定なのか」という放送プラットフォームの分断でした。
下表は、2021年に開催されたサッカー日本代表の主要公式戦における対戦カード、キックオフ日本時間、および実際の放送・配信ステータスを網羅した詳細データです。
| 日程(日本時間) | 対戦カード(大会種別) | キックオフ時間 | 生中継・配信媒体 | 地上波放送の有無 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年3月25日 | 日本 vs 韓国(国際親善試合) | 19:20 | 日本テレビ系列 | 生中継あり |
| 2021年3月30日 | モンゴル vs 日本(W杯2次予選) | 19:30 | フジテレビ系列 | 生中継あり |
| 2021年5月28日 | 日本 vs ミャンマー(W杯2次予選) | 19:20 | 日本テレビ系列 | 生中継あり |
| 2021年9月2日 | 日本 vs オマーン(最終予選・ホーム) | 19:15 | テレビ朝日系列 / DAZN | 生中継あり |
| 2021年9月8日 | 中国 vs 日本(最終予選・アウェー) | 24:00 | DAZN(独占生配信) | 完全なし(消滅) |
| 2021年10月8日 | サウジアラビア vs 日本(最終予選・アウェー) | 26:00 | DAZN(独占生配信) | 完全なし(消滅) |
| 2021年10月12日 | 日本 vs オーストラリア(最終予選・ホーム) | 19:14 | テレビ朝日系列 / DAZN | 生中継あり |
| 2021年11月11日 | ベトナム vs 日本(最終予選・アウェー) | 21:00 | DAZN(独占生配信) | 完全なし(消滅) |
| 2021年11月17日 | オマーン vs 日本(最終予選・アウェー) | 25:00 | DAZN(独占生配信) | 完全なし(消滅) |
表を見れば一目瞭然であるように、2021年秋に開幕したアジア最終予選のアウェー戦は、ことごとく地上波放送の欄から消え去りました。長年、サッカー日本代表の試合は「リモコンのボタンを押せば誰でも無料で見られる国民の共有財産」であったため、この中継スケジュールが発表された際のサポーターの困惑と反発は凄まじいものでした。

なぜアウェー戦は地上波中継がなかったのか?放映権料高騰とDAZN独占の舞台裏
「なぜ代表戦なのにテレビでやらないのか」という怒りの声の裏には、国際的なスポーツビジネスの冷徹なゲームチェンジが存在していました。発端となったのは、AFC(アジアサッカー連盟)が販売する放映権のパッケージ化と天文学的な価格高騰です。
当時、AFCの商業権を包括取得したのは、スイスに拠点を置く国際的スポーツ代理店FMA(Football Marketing Asia)でした。彼らは2021年から2028年までの8年間に及ぶAFC主催大会(男女代表戦、ACL、フットサルなど全大会)を一括パッケージ化して入札を実施。その提示額は業界関係者の証言によると「日本市場だけで数百億円規模」に達していました。
日本の民放キー局が直面した壁はあまりに高大でした。テレビ広告費が頭打ちとなる中、1試合あたり数億円とも試算される放映権料を支払い、深夜帯のアウェー中継で制作費と電波料を回収することは、ビジネスモデルとして完全に破綻していたのです。編成担当者が「どれだけ高視聴率を取っても莫大な赤字が確定する」と頭を抱えて撤退する中、その巨額パッケージを電撃的に買い取ったのがOTT動画配信の黒船・DAZNでした。
DAZNはアジア市場における有料会員基盤を一気に拡大するため、AFCと長期の独占大型パートナーシップを締結。「日本戦のアウェー全試合完全独占」という最強のキラーコンテンツを引っ提げ、日本のスポーツ視聴習慣を根本から塗り替える乾坤一擲の勝負に出たのです。
テレビ朝日とNHK BSの苦肉の策|ホーム戦生中継と録画中継の境界線
地上波から代表戦が完全に消え去る危機に対し、国内テレビ局も完全に手をこまねいていたわけではありませんでした。老舗のサッカー中継局であるテレビ朝日は、莫大なパッケージ全体の取得こそ断念したものの、日本サッカー協会(JFA)が興行権・権利元に関与できる「日本国内開催のホームゲーム」にターゲットを絞って粘り強く交渉。その結果、ホーム戦に限り地上波独占生中継を死守することに成功しました。
「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」というおなじみのキャッチフレーズのもと、10月12日のホーム・オーストラリア戦では、敗れれば森保監督解任が決定的と囁かれた緊迫の首位攻防戦を生中継。テレビ朝日の生中継は平均世帯視聴率16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、依然として地上波が生み出す瞬発的な社会的インパクトの大きさを見せつけました。
一方で、アウェー戦におけるテレビの灯火を期待されたNHK BS1も、かつてのような「衛星生中継」を実現することは叶いませんでした。DAZNが「日本国内における独占ライブ配信権」を頑なに保持したため、NHKが許されたのは数日遅れの「録画ダイジェスト中継」のみにとどまったのです。リアルタイムで結果を共有したいファンにとって、すでに結果が分かっている録画中継は代替手段になり得ず、テレビ中継の完全な敗北を象徴する光景となりました。

【実態検証】「無料視聴の裏ワザ」を追ったファンの狂騒と現在のネット配信環境
2021年9月から11月にかけて、ネット上やSNSでは「代表戦をどうしても無料で見る方法」を探し求めるサポーターによる情報戦が繰り広げられました。当時、検索エンジンを席巻したのが「DAZNの1ヶ月無料トライアル」を活用した視聴方法です。
2021年当時は、新規登録時に「最初の1ヶ月間は月額料金(当時税込1,925円)が無料」というプロモーションが標準で用意されていました。そのため、ファンコミュニティでは以下のような「裏ワザ」が指南され、大量のユーザーが試合当日に駆け込み登録を行いました。
- 9月7日の中国戦直前に新規登録:10月8日のサウジアラビア戦までを無料トライアル期間内でカバーして解約する。
- 家族のアカウントや別決済手段の利用:11月のベトナム戦・オマーン戦に合わせて別名義で再登録する。
- 各キャリアの連携キャンペーン:ドコモの「DAZN for docomo」やauのセットプラン特典を併用して実質無料期間を延ばす。
しかし、こうした「お試し視聴」の抜け道はプラットフォーム側にとっても当然想定内であり、持続可能なものではありませんでした。DAZNはその後、2022年2月に無料トライアルを全世界的に完全廃止。料金プランも段階的な大幅値上げを実施し、2026年現在の定額料金体系へと移行していきました。
当時横行していた海外の違法ストリーミングサイトへのアクセスは、マルウェア感染やフィッシング詐欺の温床となり、警察庁やセキュリティ機関が警告を発する事態に発展。「タダで見る」ことのリスクが周知された結果、日本のサッカーファンは「代表戦のリアルタイム観戦はコストを払って楽しむもの」という現実を受け入れるリテラシーを獲得していくことになります。
一般に知られていない盲点と誤解|五輪世代の突き上げと招集メンバーの過酷な台頭
2021年の日本代表を語る上で見落としてはならないのが、同年夏に開催された東京オリンピック男子サッカー(U-24日本代表)との不可分な関係性です。オーバーエイジ(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)を含むU-24チームは4位入賞を果たし、その直後から彼らは休む間もなくフル代表の最終予選へ合流しました。
ネット上では「地上波で見られないから代表の人気が落ち、選手のモチベーションが下がっているのではないか」という批判的な言説が飛び交いました。しかし、実際のピッチで起きていたのは、日本代表の世代交代を巡る凄まじい内部競争と戦術的脱皮でした。
初戦オマーン戦の敗戦、第3節サウジアラビア戦の敗北により、日本は3試合で1勝2敗という歴代最終予選でも最悪のスタートを切ります。追い詰められた森保監督は、長年堅持してきた「4-2-3-1」を放棄し、中盤をアンカーと2枚のインサイドハーフで構成する「4-3-3」へと劇的なシステム変更を断行しました。
ここで救世主となったのが、東京五輪で主力として躍動した田中碧と守田英正、そして11月のアウェー戦で途中出場から衝撃的なアシストを連発した三笘薫ら新世代でした。画面の向こうでしか見られない閉ざされた状況下だったからこそ、DAZNの生配信を見守った熱心なコアサポーターの間で、三笘の圧倒的な個の打開力に対する熱狂と口コミが一気に沸騰したのです。
【プロの結論】スポーツ放映権ビジネスの構造改革と視聴者の選択基準
メディア社会学およびスポーツ経済の観点から2021年の一連の事態を総括すると、これは「テレビ局の衰退」という単純な話ではなく、「スポーツコンテンツの価値基準がマス向け広告からDirect-to-Consumer(直接課金)へ不可逆的にシフトした瞬間」であったと結論付けられます。
昭和から平成にかけて定着した「代表戦は国民全員がテレビでタダで見るもの」という価値観は、日本の経済成長とテレビ広告の高額スポンサー料に支えられた特異なモデルでした。欧州や南米においてサッカー中継が有料チャンネル(スカパー!の原型やSky Sports、Canal+など)で視聴されるのが常識であるのと同様、日本もついにグローバル水準のビジネスモデルに組み込まれたのです。
このメディア環境において、私たちが持つべき視聴の判断基準は極めて明快です。
- 有料配信(DAZN等)を迷わず契約すべき人:
代表戦のリアルタイムの緊張感を1分たりとも逃したくない熱狂的サポーター、戦術や若手の台頭をつぶさに観察したいコアファン、Jリーグや欧州主要リーグも日常的に追いたいフットボール愛好家。 - 地上波・無料コンテンツ中心で割り切るべき人:
お祭り騒ぎの時だけ雰囲気を味わいたいライト層、試合結果やハイライト映像を翌朝のニュースやJFA公式YouTubeチャンネルの「Team Cam」などで後追いで確認できれば満足できるユーザー。
無料でお茶の間に届くことをただ待つ時代は終わりを告げました。自らが支払う視聴対価が、代表チームの強化費や放映権を通じてサッカー界のエコシステムを循環しているという意識こそが、現代のスポーツ観戦における成熟したファン心理と言えます。

【サッカー日本代表 日程 2021 放送】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2021年のカタールW杯最終予選アウェー戦は、現在からでもフルマッチを視聴できますか?
A1:DAZNの見逃し配信期間は通常、試合終了後7日間から30日程度で終了するため、現在は定額見逃し配信での視聴はできません。ただし、JFAの公式アーカイブ映像や、DAZNが過去の名勝負として再配信する特集番組、または公式ハイライト映像等で重要なハイライトシーンを視聴することは可能です。
Q2:なぜホーム戦だけはテレビ朝日で生中継できたのですか?
A2:国際サッカー連盟(FIFA)およびAFCの規定により、ホームゲームの商業権・放映権の一部については開催国サッカー協会(JFA)および国内組織の意向が反映される枠組みが存在したためです。テレビ朝日は巨額の費用をホーム戦のみに集中投資することで、国内独占生中継の権利を確保しました。
Q3:地上波中継がなくなったことで、視聴率は実際にどう変化したのですか?
A3:アウェー戦の地上波中継が完全に「0%(放送なし)」となったため、瞬間的な一般層への波及力は大幅に低下しました。一方で、ホーム戦のオーストラリア戦では世帯視聴率16.8%を記録するなど、テレビ放送がある試合には依然として高い視聴が集まり、地上波の「一過性の拡散力」と有料配信の「コア層のエンゲージメント」の二極化が浮き彫りとなりました。
まとめ:2021年が切り拓いた日本サッカー中継の未来と現代への教訓
2021年のサッカー日本代表を巡る日程と放送の狂騒劇は、日本における「スポーツのタダ見文化」に終止符を打ち、デジタル有料配信の時代を決定づけた歴史的な転換点でした。アウェー戦の地上波消滅に最初は反発したファンも、DAZNのマルチアングル配信や戦術解説番組、見逃し配信の利便性を体感することで、新たな観戦スタイルを確立していきました。
森保ジャパンが崖っぷちからシステム変更と新戦力の抜擢によってカタールW杯への切符を掴み取り、本大会でのドイツ・スペイン撃破という歴史的快挙へ繋げていった道筋の起点は、間違いなくこの2021年秋の苦闘にありました。激動のメディア環境の変化を正しく理解し、自らのライフスタイルに合ったプラットフォームを選択してチームを支えていくことこそが、次なるワールドカップの熱狂を最大限に享受するための第一歩です。 (出典: サッカー日本代表 日程 2021 放送(Yahoo!ニュース))